変形性膝関節症とは、40代以降の女性に多く関節のクッションである軟骨が、加齢や筋肉量の低下などによりすり減って、痛みが生じる病気です。軟骨がすり減った分、膝関節の骨と骨のすき間が狭くなって内側の骨があらわになり、骨のへりにトゲのような突起物ができたり、骨が変形したりします。また、関節をおおっている関節包(かんせつほう)と呼ばれる繊維膜の内側に炎症が起こるため、黄色味がかった粘り気のある液体が分泌され、いわゆる「膝に水がたまった」状態になります。
■症状
歩行時に膝の痛みが出現する病気です。平地での歩行は大丈夫でも、階段で膝が痛いために困っている、歩行時の膝の痛みはないけれど、正座が痛くてできないなどが初期の変形性膝関節症の症状です。さらに変形性膝関節症が進むと、次第にO脚が進んでいき、階段のみでなく平地での歩行にも支障をきたすようになります。日常生活上で支障をきたすようになるとかなり変形性膝関節症が進行している可能性が高くなります。
■発症原因
原因がはっきりしない一次性のものと、原因が特定できる二次性のものに分けられ、そのうち多くを占めるのは、筋肉の衰えや肥満、加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使い過ぎによりすり減り、関節が変形するなどのさまざま症状が複雑に絡み合って発症する一次性変形性膝関節症です。一方、二次性変形性膝関節症は、ケガや病気、関節リウマチ、関節構造の損傷などによって引き起こされます。
■治療手段
まずは注射、内服薬、リハビリを処方します。
当院のリハビリでは理学療法士により膝・膝以外からの影響を取り除き症状の改善を促します。又、治癒促進のため干渉波低周波治療機器や超音波なども併用していきます。
【干渉波低周波治療機器】
【超音波】
症状次第で注射、内服薬の内容を変更していきます。
しかし、症状がひどく改善が乏しい場合は手術を検討します。
手術の種類
①関節鏡視下手術
関節内ですり切れた半月板や軟骨のささくれなどを取り除いたり、増殖した滑膜を除去したりする手術で、関節内の清掃をする手術です。膝での場合、関節鏡を用いた小さな傷で手術でき、変形性関節症の初期には効果の高い手術です。ただし、軟骨が再生するわけではないので変形を遅らせることが主な目的で行われます。
多くの場合、変形性膝関節症に対して最初に用いられる外科的な治療法は、関節鏡視下手術となります。この手術では、関節内部の異常を観察して、診断を行うと同時に、治療も行います。一般的な関節鏡視下手術では、小さなカメラを膝関節の内部に挿入して、特定された部位に対し治療を行います。関節鏡視下手術の際によく実施される処置としては、以下のものがあげられます。
傷んだ軟骨を切り取る。
膝関節の内部にはがれ落ちた組織の破片を取り除く。
膝関節の内部に液体を流して洗浄する。
傷ついた関節軟骨を移植片で修復する。
裂けた半月板(軟骨)を除去または修復したり、傷ついた靱帯を再建したりする。
②骨切り術
変形性膝関節症によって、内反変形(O脚)や外反変形(X脚)になり痛みのひどい場合や歩行が困難になった場合に行われる手術で、膝関節の近くで脛骨を切って向きをかえることで、変形を矯正して痛みを取り除きます。骨を切った後は、数日間器具を付けてO脚を矯正します。術後はややX脚になります。
「高位脛骨骨切り術(HTO; High Tibial Osteotomy)」では、脛骨の高い位置(体に近いほう)を斜めに切ってつなげ直すことで、本来のまっすぐな骨に戻します。骨切り方法は他にも、「脛骨顆外反骨切り術」など様々あり、どの骨切り術でも自分の骨を温存できることが特徴です。切った骨の部分が癒合(ゆごう)するまでに時間がかかるため、入院期間が長く、痛みが取れるのに数カ月かかりますが、膝がスムーズに曲がるようになり、動きに制限がありません。そのため、肉体労働やスポーツを希望される場合にも対応できます。40~50代程度の年齢が若い方に行うことが多いです。
③人工膝関節置換術
変形性膝関節症によって変形した関節を人工の関節(人工関節)に置き換える手術です。痛みの原因になる部位を手術で取り除くため疼痛の改善に大きな効果があります。変形性膝関節症の発生原因は、加齢だけでなく肥満や骨粗鬆症など、生活習慣病も複合的に関係しているとされています。肥満は関節への負担を増し、症状を悪化させるおそれがあります。各種の療法と並行して、生活の見直しも行いましょう。