浮腫(むくみ)

むくみは、浮腫とよばれています。多くの場合は病気ではありません。身体の中の水分の分布が変化した状態と考えてください。人間の身体の60%は水分でできていて、そのうち細胞の中に3分の2、細胞の外に3分の1(血液と細胞間質液※1)の割合で分布しています。血液が流れる毛細血管の壁には微小な穴があり、細胞間質液には毛細血管からしみ出した酸素や栄養素を細胞に届け、細胞の代謝によってできる二酸化炭素や老廃物を毛細血管に戻すはたらきがあります。むくみはなんらかの原因によって、毛細血管からしみ出す水分量が増える、または細胞間質液から血管に戻す量が減り、細胞間質液が多くなることで起こるものです。このように、細胞と細胞間質には常に水分が存在しているため、足の場合「靴下のあとが少しつく」くらいの状態は正常です。また、細胞間質液はリンパ管にも液体を送り込んでおり、リンパ管が手術などによって詰まることがむくみの原因になる場合があります。

浮腫

■発症原因
原因である体内水分の分布のコントロールには、①血管内の静水圧(血管内の水分量)②血管内の浸透圧③血管の透過性④リンパ管が関与しています。その他に外的な要因として⑤長時間同じ姿勢でいること(特に下肢のむくみの場合)があげられます。それぞれについてみていきましょう。

1 血管内の静水圧の上昇
むくみは血管内の水分が多くなりすぎたとき、もしくは静脈がどこかでせき止められ、静脈血圧(血液が流れる圧力)が上昇し、血管からしみ出す水分量が増えることで起こります。水分や塩分(摂取すると水分を多く取り込む性質があるナトリウムとなって体内へ運ばれる)を摂りすぎたときにむくむのは血管内の水分量が多くなり、静水圧が上昇するためです。

原因となる病気
・心不全(心臓が血液をうまく巡回させられない)
・腎不全(腎臓がうまく水分を尿として排泄できない)
・下肢静脈瘤(下肢の静脈に水分がたまりやすくなる)
・深部静脈血栓症(静脈の中に血栓ができる)や、子宮筋腫(腹腔内の腫瘍)で、血栓や腫瘍により血管が圧迫されたときなど

2 浸透圧の低下
血液内の栄養が少なくなると血管内に水分を保つための力(浸透圧)が低下するので、水分を血管内に保っておくことが難しくなることがあります。そのため、血管の外に水分や塩分が増え、身体がむくみます。

原因となる病気
・栄養失調(消化管の病気で血管に水分の吸収ができない)
・ネフローゼ症候群(腎臓からアルブミンが漏れてしまう)
・肝硬変(肝臓でアルブミンの生産が低下している)など

3 血管透過性が高くなる
血管透過性とは、血管と血管外の物質の出入りのことです。何らかの疾患で、血管自体が血液を保っておくことが難しくなり、水分が血管外に出てしまいむくむことがあります。

原因となる病気
・膠原病(リウマチ関連疾患)
・内分泌疾患(主に甲状腺疾患)など

4 リンパ管の閉塞
手術でリンパ節を取り除いたり、放射線治療によって、リンパの流れが停滞することで起こります。(リンパ浮腫)

5 長時間同じ姿勢でいること
長い間立ちっぱなしや座りっぱなしでいると、重力の関係で下肢に水分がたまり、むくみの原因になります。長い間歩行した場合はあまりむくみません。これは筋肉のポンプを使って血液が循環しているためです。

6 加齢などにより皮膚の張りが失われていくと、細胞外にあふれ出た水分に毛細血管に戻るための圧が掛かりにくくなります。結果、むくみやすくなります。
最近では、浮腫改善のために着圧を高める靴下やストッキングが市販されていますよね。これも皮膚の張りを補うことで細胞外の圧を高め、毛細血管に水分を戻す作用を高めることにより、むくみ解消を促進する効果があります。

■治療手段
◎浮腫の治療には、根本的な原因(病気)に対する治療の他に、食事中の塩分(ナトリウム)の量を減らしたり、利尿剤と呼ばれる薬を使って過剰な水分を排出させたりすることがあります。また、着圧ストッキングの使用や寝るときの脚の挙上を推奨する場合もあります。

◎食事中の塩分(ナトリウム)を減らす
食卓塩や加工食品に含まれるナトリウムは、浮腫を悪化させる可能性があります。塩分を多く摂取すると、塩分濃度を正常に戻そうと水分を多く摂り込みます。そのため、血管内の水分量が増えてしまい、浮腫につながるのです。摂取する塩分の量を減らすことは浮腫の軽減につながります。特に利尿剤を服用している場合にその効果が大きくなります。

◎利尿薬(利尿剤)
利尿薬とは腎臓から水とナトリウムをより多く排出させる薬の総称で、浮腫を軽減することができます。利尿薬によりあまりに速く大量の塩分・水分を排出させてしまうと、血圧が下がり、ふらつきや失神を引き起こし、腎臓の機能を低下させるので注意して服用する必要があります。しっかり推奨用量を守り服用すれば、副作用は起こりにくいです。

◎弾性ストッキング
下肢浮腫は、弾性ストッキングを使用することで予防や治療を行うことができます。ストッキングには、膝丈、大腿丈、パンツタイプのストッキングなど、さまざまな種類のものがあります。ほとんどの患者さんは、膝丈のストッキングで十分です。ストッキングによっては、皮膚の炎症や痛みを引き起こすことがありますが、ストッキングの適切な測定と装着により、不快感を軽減することができます。
効果的な弾性ストッキングは、足首で最も大きな圧力をかけ、脚に向かって徐々に圧力を減らしていくものです。弾性のストッキングは、薬局や外科用品店で処方箋なしで購入できます。中等度から重度の浮腫のある人、立ち仕事の多い人、潰瘍のある人は、通常ですと医師から処方されたストッキングが必要です。医療機関でストッキングの寸法を測ってもらうか、ストッキングの処方箋を書いてもらい、外科用品店や専門店で必要な寸法を測ってもらうことができます。

◎脚の高さ
下肢の浮腫は、1日に3~4回、30分間脚を心臓の高さより高くすることで改善することができます。軽度の静脈疾患であれば、脚を上げるだけで浮腫が軽減または消失することもありますが、重症の場合は他の方法が必要です。
仕事や学校で1日に何度も足を上げることが難しい場合には、就寝の際に脚の高さを調整すると良いでしょう。

◎長時間の同一姿勢は避けましょう
 筋力を使わずに同じ姿勢でいると血流が悪くなります。適度に動きましょう。

◎適度な運動
下肢の筋肉がつくとむくみにくい体質になります。ウォーキングやランニングなど、日々の適度な運動を心がけましょう。
疲労がたまるような運動は、筋肉が硬くなり、血流の妨げになるので運動のしすぎにも注意しましょう。
又、寝る前に、寝た状態で足首の上げ下げ運動を数回行ってから寝てみましょう。

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